(このページは、日本FP協会が発行している「Journal of Financial Planningの5月号の特集」より抜粋、転載しています。)
主に下記の5つ。
- 被用者保険の適用拡大
- 在職中の年金受給の在り方の見直し
- 受給開始時期の選択肢の拡大受給開始時期の選択肢の拡大
- 確定拠出年金の加入可能要件の見直し
- その他の改正点
1.被用者保険の適用拡大
・適用される従業員数の段階的な引き下げ
今まで、500人超の従業員数の企業等適用されていたものが
2022年10月から、100人超規模の企業まで適用する。
2024年10月から、50人超規模の企業まで適用する。
従業員数については、「雇用する従業員数」ではなく、週労働時間が通常の労働者の4分の3以上の者」であり、かつ法人ならば「同一の法人番号を有する全事業所単位」で行う。
そして、「1年以上継続して雇用される見込みがあること」という要件が撤廃され、通常の社会保険加入要件の「雇用期間が2週間を超える」ことが要件になる。
短期労働者(パートタイム労働者)被用者保険適用要件 | (1)週労働時間 20時間以上 |
(2)月額 8万8千円以上 年収換算 約106万円以上 (所定の労働時間や賃金で判断し、残業代等を含まない。) | |
(3)雇用期間 2ヶ月超 | |
(4)学生は、適用除外 | |
(5)2022年10月より 従業員数100人超の規模の企業まで適用される。 2024年10月より 従業員数50人超の規模の企業まで適用される。 ただし、従業員数は週の労働時間が通常者の4分の3以上の者。 また、法人は同一の法人番号の全事業所単位で行う。 |
・個人事業の法律・会計事務を取り扱う士業についても常時5人以上の従業員を使用する場合に適用対象となる。
2.在職中の年金受給の在り方の見直し
・在職定時改定(→65歳以降の厚生年金)の導入
2022年4月以降、毎年10月にそれまで納付した実績を反映することになった。
・在職老齢年金制度
在職老齢年金制度とは、働きながら年金を受給する時に、賃金(総報酬月額相当額)と年金月額の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になる制度。
今回の改正で
60歳〜64歳は、賃金と年金月額の合計が47万円超ならば、支給停止となる。(賃金+年金月額>47万円)
これにより、今までの65歳の支給停止基準と同様になる。
60歳以降 | 賃金+年金月額>47万円超(令和2年度額)の時、年金の一部または全部の支給停止が始まる。 |
3.受給開始時期の選択肢の拡大
2022年4月以降に70歳になる人が対象。(基準として、65歳に請求する時を100%としています。)
・繰り上げ受給
1か月繰り上げるごとに0.5%減額(最大30%の減額)だったが、今回の改正で0.5%が0.4%(最大24%の減額)に引き下げられる。
・繰り下げ受給
受給開始年齢が75歳までとなり、最大84%の増額となる。
2022年4月以降に70歳になる人 (基準を65歳で請求するときを100%としています。) | 繰り上げ受給 (65歳よりも前に請求する。 ただし、60歳までしか繰り上げできない。) | 1ヶ月繰り上げるごとに月0.4%の減額 60歳に請求するとき、最大で24%の減額 (月0.4%×12ヶ月×5年間=24%) |
繰り下げ受給 (65歳よりも後に請求する。 ただし、75歳までしか繰り下げできない。) | 1ヶ月繰り下げるごとに月0.7%の増額 75歳に請求するとき、最大で84%の増額 (月0.7%×12ヶ月×10年間) |
4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し
・加入可能年齢の引上げ
企業型確定拠出年金(企業型DC)については、2022年5月より65歳未満から70歳未満まで引き上げられる。
個人型確定拠出年金(iDeCo)については、2022年5月より60歳未満から65歳未満まで引き上げられる。
・受給開始時期
2024年4月からは、企業型DC、iDeCoともに60歳から70歳までだったものを75歳までに拡大される。
加入可能年齢 | 企業型確定拠出年金(企業型DC) | 2022年5月より、65歳未満から70歳未満まで |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 2022年5月より、60歳未満から65歳未満まで | |
受給開始時期 | 上記 両方 | 2024年4月より、60歳から75歳まで |
5.その他の改正点
- 児童扶養手当と障害年金の併給調整の見直し
- 未婚のひとり親等の申請全額免除基準の追加
- 2ヶ月を超えて雇用を見込まれる者の被用者保険の早期加入措置
- 年金担保貸付事業等の禁止
- 年金生活者支援給付金制度における所得・世帯情報の紹介対象者の見直し等
- 国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切り替え
- 脱退一時金制度の見直し
- 厚生年金保険法における日本年金機構の調査権限の整備
今回の改正により、メリットを受ける人もいますし、デメリットに受ける人もいます。
ここに書かれたことは、参考程度にして確認したいことや疑問については、お近くのCFP、AFPの方々にご相談して下さい。